第一章 そんな日もある

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 食卓が重い空気になりかけたところで、お母さんがテレビのスイッチを入れた。  チャンネルを変えて、野球中継が映し出される。 「プロのプレーを見たら、なにかヒントがあるかもしれないわ」  我が家は全員野球が好きで、特にお父さんは大のプロ野球ファンだ。  お父さんが応援しているチームの試合じゃなくても、家族で野球中継を見ることはよくあることだ。  ちなみに私は、特定のチームのファンということはないけれど、弱いチームを見ていると応援したくなるタイプだ。  さっきの話じゃないけど、弱いチームが強いチームに勝つシーンは見ていて熱くなれる。  私たちが通う御崎台高校も、県内で強豪と言われるような学校ではない。  公立にしては強いほう、というくらいで、甲子園に出場したことはない。  学力レベルも普通よりちょっと高いくらいで、家から一番近くてちょうどいい高校だから受験したというのはあるけれど、私と湊にとって、志望理由はそれだけじゃない。  この学校で甲子園に行けたらすごいよね。  これが私と湊の素直な気持ちだった。  私立の強豪校を倒して、甲子園に出る。  それが叶ったらどれほどすごいか。想像するだけでテンションが上がる。
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