第一章 そんな日もある

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「一回り目は、様子を見たって感じだったよ」 「そうだな……。なんていうか、気迫みたいなものはなかった。余裕をもって球筋を見られていたっていうか」 「それで二回り目にしっかり打ってくるんだから、たいしたもんだぜ」  湊は一年生の秋季大会で活躍して、そのときからこのチームのエースピッチャーになった。  冬を越えて速球も変化球も磨きがかかって、チーム内でも湊の球を打てる人はほとんどいなかった。 「でも、これで諦めるわけにはいかないでしょ。練習するしかないよ」  私はどうにかして二人を奮い立たせようと、意識して大きな声を出した。  私の発言に反応したのは遥人だった。湊は黙って下を向いている。 「そうだよな。夏の県予選まで、まだまだ時間はある。監督に話して練習試合をもっと増やしてもらって、実戦を積もうぜ」 「ああ……」  遥人の表情には明るさが戻っているように見えたけれど、湊はまだ沈んだままだ。  この状態のまま帰りたくはなかったから、私は立ち上がって遥人のバットケースを手に取った。 「庭坂、なにするんだ?」 「ちょっとバット借りるね」  私がバットを握ってグラウンドに出ると、湊は顔を上げて私を見る。  締まりのない顔だ。私がなんとかしなくちゃ。
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