第一章 そんな日もある

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「湊、一球投げてよ」 「なに?」 「投げてって言ってるの。遥人、受けてくれる?」  私は二人の返事を待たずにバッターボックスへと向かった。  綺麗に整備されたグラウンドを歩くのは気分がよかった。 「いいんじゃね? 湊、俺もお前の球、受けたくなった」 「……わかったよ」  私がバットを振って待っていると、キャッチャーミットを用意した遥人が寄ってくる。 「打つ気じゃないんだろ?」 「なに言ってんの? 本気で打ちにいくよ」 「マジ? っていうか、ヘルメットはかぶれよ」  そう言われた私がヘルメットを取りに行くと、二人はキャッチボールを始めた。  遥人のミットに湊の球が突き刺さるときの音が、私は好きだ。 「もういいでしょ?」  準備を整えた私が打席に近づく。湊は帽子をかぶり直すだけで何も言わなかった。 「全力で投げてよ」 「当たりそうになったら、ちゃんと避けろよ」  私の発言に答えたのは遥人だ。  さすがにぶつけられるとは思ってないけど、打席に立つとやはり迫力があって、恐怖感みたいなものが出てくる。
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