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「湊、一球投げてよ」
「なに?」
「投げてって言ってるの。遥人、受けてくれる?」
私は二人の返事を待たずにバッターボックスへと向かった。
綺麗に整備されたグラウンドを歩くのは気分がよかった。
「いいんじゃね? 湊、俺もお前の球、受けたくなった」
「……わかったよ」
私がバットを振って待っていると、キャッチャーミットを用意した遥人が寄ってくる。
「打つ気じゃないんだろ?」
「なに言ってんの? 本気で打ちにいくよ」
「マジ? っていうか、ヘルメットはかぶれよ」
そう言われた私がヘルメットを取りに行くと、二人はキャッチボールを始めた。
遥人のミットに湊の球が突き刺さるときの音が、私は好きだ。
「もういいでしょ?」
準備を整えた私が打席に近づく。湊は帽子をかぶり直すだけで何も言わなかった。
「全力で投げてよ」
「当たりそうになったら、ちゃんと避けろよ」
私の発言に答えたのは遥人だ。
さすがにぶつけられるとは思ってないけど、打席に立つとやはり迫力があって、恐怖感みたいなものが出てくる。
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