第一章 そんな日もある

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「じゃあ、また明日な」 「おぅ」 「バイバイ」  私と湊の家は、学校から歩いて二十分ぐらいのところにある。  それに対して、遥人は隣町から自転車で通学していて、私たちの家とは反対方向にあるから、こうして校門で別れることになる。  遥人が去って二人になったいつもの帰り道。  湊は歩くスピードが速く、私のペースにあわせてくれるような配慮はない。  それでも、私たちが自転車を使わないのには理由がある。  この街は坂が多く、自転車に乗る文化があまりないのだ。  学校から少し離れると、一つ目の長い上り坂に入る。  ただ歩くだけならしんどい坂道だけど、上るにつれて少しずつ海が見えてきて、この景色があるから毎日歩くのも許せるというものだ。  上り坂になっても歩く速度を落とさない湊。  それについていくだけで私の呼吸は乱れてしまう。  だけど私は「待って」とか「もっとゆっくり歩いて」とは言わない。  言ったら負けだと思ってるから。
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