第一章 そんな日もある

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 ちなみに、私の名前である琴葉は、お母さんが「言の葉(ことのは)」という表現が好きだから名付けたと聞いている。  お母さんはそのまま「言葉」と命名しようとしたらしいけど、それだけはよしてくれと、お父さんが止めたらしい。  お父さんのファインプレーだ。  琴の字があてられた理由は特にないみたいだけど、それでも私は自分の名前をそれなりに気に入っている。  だから、ということもないけれど、私は言葉というものを結構大切にしている。  私が「少し待って」と言葉にして湊に伝えれば、きっと湊は聞き入れてくれる。  それがわかっているからこそ、自分からは言いたくない。  くだらない意地だということはわかっているけれど、誰にだって譲れないものくらいあるよね。  細かな気遣いはないし、口もあまりよくないけれど、湊は普段は優しい人だ。  だからこうして高校二年生になった今でも、一緒に登下校をするくらいに仲はいい。  私たちは別に恋人どうしとかではないけれど、お互いに相手のことを大切に思っている……と、私は思っている。
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