第三章 外角低めのストレート

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 湊のピッチングは快調だった。  わずか十二球で三者凡退におさえ、遥人と何か言葉を交わしながらベンチへと戻っていく。 「キャッチャーは、レギュラーなのか?」 「う、うん。湊の親友。二年生だよ」  誰も私のことなんか気にしてないと思うけど、今の私は一人でぶつぶつ言っているおかしな子になっている。  自然と小声にもなるけれど、それでもお兄ちゃんと一緒に野球が見られるこの状況が、素直に嬉しかった。 「お兄ちゃん」 「どうした?」 「試合、よく見ててね」 「わかってる」  お兄ちゃんがどうしてこのタイミングでここに姿を現したのかはわからないけれど、このチャンスを逃す手はなかった。  お兄ちゃんにうちのチームを分析してもらって、それをあとで湊たちに報告しよう。  そう決めた私は、周りのことはおかまいなしで、試合に集中した。  試合は予想通り紅組が優勢で、五回を終わって三対〇で紅組がリードしている。  このイニングで湊は交代になるわけで、湊のピッチングについてお兄ちゃんに聞いた。  今日の湊は打たれたヒットは一本だけで、球数も少なく、危なげない投球だった。  お兄ちゃんもきっと高評価をしてくれるに違いない。
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