第三章 外角低めのストレート

9/22
前へ
/229ページ
次へ
「外角低めのストレート」 「……え?」  お兄ちゃんが何を言っているのかわからなかった。  ううん、言葉そのものは理解できるけど、何が言いたいのかがわからない。  というか、その先に続く言葉があるものだと思った私は、しばらく何も言わないでいたのだけど、お兄ちゃんはそれきり何も言わなかった。 「……ど、どういうこと? それがどうしたの?」  結局私が折れる形で質問した。  こうしている間も紅白戦は進んでしまう。  記録をつけなくちゃいけないけれど、この話をスルーすることもできない。 「ピッチングの基本であり、極意だ。外角低めのストレートで、いつでもストライクが取れるようにならないとダメだ」  どうやら特定の場面について話をしているわけじゃないらしい。  確かに湊は、細かなコントロールよりも力で押すタイプだから、調子の良し悪しに左右されがちだ。 「それと、ピッチングのリズムが一定になってる。球種で緩急をつけるだけじゃ、三周りもすれば捕まるぞ」  緩急は二人が課題に挙げていたものだ。  それでカーブの練習をしていたし、今日も何回か投げていた。  相手バッターの反応を見た感じでは、効果的に使えていたように思っていたのに、お兄ちゃんからは厳しいダメ出しが入ってしまった。
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加