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それに、リズムに関しては、私は全然気付かなかったというか、気にしてなかった。
本人たちは自覚できているのかな。
「あのキャッチャーのリードはなかなかよかったな。カーブはあんまり要求しないで、見せ球にしておけばいい」
今度は褒めてくれたけど、それが湊のことじゃなくて遥人のことだったので、なんとなく悲しくなった。
「ほ、他には? 湊の投げる球で何か良かったところは?」
だから私は、半ばすがるような気持ちでこう聞いた。
さっきまではスコアブックも書きながら話を聞けたけど、そんな余裕はなくなっていた。
「そうだなぁ。あのチェンジアップは、リリースがもう少しうまくなれば、十分決め球として使えるな。まぁ、それがなかなか難しいんだけど」
「リリース? 難しいの?」
「リリースってのは、ボールを手から放す瞬間のことだ。チェンジアップは、ストレートを投げるときと同じような腕の振りで投げないと効果がない。球の遅さでタイミングをずらすんじゃなくて、速い球がきたと思わせないといけないんだ」
「それは、練習すればできるようになる?」
「もちろんだ。むしろ練習するしかない。カーブのコントロールなんてアバウトでいいから、とにかく腕の振りだな」
「そうなんだ……」
私は力なくそう答えるしかできなかった。
今日の湊のピッチングなら、もっと褒められるというか、前向きな言葉がもらえるものだと思っていたから、結構ショックだった。
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