第三章 外角低めのストレート

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「琴葉、手が止まってるぞ」 「え? あ、やばっ。もうツーアウトになってる」 「ほら、俺が教えてやるから、急いで書くぞ」 「う、うん」  悔しいし悲しいけれど、今はとりあえず試合に集中だ。  お兄ちゃんが言ってくれたことはあとでちゃんと湊たちにも話して、三人でちゃんと振り返ろう。  それからもお兄ちゃんは所々でアドバイスというか、思うところを言ってくれた。  それをそのまま監督や先輩に伝えられればいいと思ったけど、そんな度胸は私にはない。 「しっかし、この球審は厳しいなぁ」  試合が最終回を迎えたところで、お兄ちゃんがそんなことを言いだした。  ストライクとボールの判定のことを言っているんだろうけど、私にはよくわからない。 「そうなの?」 「あぁ。琴葉だって、甲子園はテレビで見るだろ? 高校野球って、プロと比べて信じられないくらいにストライクゾーンが広いからな」  言われてみれば、そんな気がした。  ベンチから見ているとわからないけど、テレビでならよくわかる。  でも、私はどちらかと言うとプロの審判が厳しいのかと思っていた。
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