第三章 外角低めのストレート

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「おつかれー」 「二人とも。お疲れ様」 「ほれ」 「持ってきてくれたの? ありがとう」  一年生たちも引き上げて私一人でベンチに残っていたら、私のカバンを持った湊と遥人が来てくれた。 「それで、今日は何だってわざわざここで話すことにしたんだ?」  遥人がもっともなことを聞いてくる。  野球の話をするにしたって、いつもは歩きながらか駐輪場でしているのだから、無理もない。 「う、うん。今日はちょっと、いつもよりたくさん話したいなって」  いきなり本題に入るわけにもいかなかったので、まずはぼんやりとした返事から入る。  さすがにお兄ちゃんのことを湊に説明してもらうわけにもいかないので、野球の話をする前に、まずは私から話をしなきゃ。 「えっとね、湊には話してあるんだけど……」  二人はベンチに腰かけていたけど、私はグラウンドに立って一生懸命説明した。  私には十歳離れた兄がいること。  十年前に交通事故で死んじゃったこと。  高校野球をやっていたこと。  私と湊が小さいとき、一緒に遊んでもらっていたこと。  春休みに突然現れたこと。  今日の試合を見に来てくれて、いろいろアドバイスをくれたこと。  要領を得ない感じになっちゃったとは思うけど、遥人は最後まで黙ったまま聞いてくれた。  所々で湊もエピソードを挟んでくれたので、遥人は信じてくれたかどうかはともかく、私の話を受け入れてくれた。
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