第一章 そんな日もある

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「だってそうじゃん。今日はたまたま打たれちゃったけど、明日もう一回やったら、次は打たれないかもしれない」  気休めにもならないような励ましだけど、私は割と本気でそう思っている。  特にスポーツの場合、実力通りに順当な結果が出るとは限らない。  格下のチームが格上のチームに勝つことだってある。私はそういう場面が好きだ。  別に運まかせと言いたいわけじゃない。  運も実力のうちだなんて、一生懸命練習してきたみんなには絶対に言いたくない。 「それを言われちまうと、何も言えないよなぁ」 「でしょ? 次は絶対にリベンジしよう。勝てると思ってやらないと、楽しくないよ」  観念したようなため息とともにそう言った湊に、今度は畳みかけるようにすぐに言葉を返した。 「やるしかないか」 「そうそう。私も全力でサポートするよ」  私がぐっと握りこぶしを作ってみせると、湊は笑ってうなずくだけで、再び歩き始めた。  今はいいこと言ったんだから、お礼の一つくらいあってもいいのに。  なんとなく悔しかったから、下りに差し掛かったところで湊の前に出た。  そんな私を黙って見ているだけの湊は、次の上り坂に入ったときは、私の隣を歩いてくれた。  それからは野球の話はせずに、他愛のない話を続けて、気付けば私の家に着いていた。  その頃には陽はすっかり沈んでいて、あたりは暗くなっていた。  今日はいつもより時間がかかる帰り道だった。
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