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「だってそうじゃん。今日はたまたま打たれちゃったけど、明日もう一回やったら、次は打たれないかもしれない」
気休めにもならないような励ましだけど、私は割と本気でそう思っている。
特にスポーツの場合、実力通りに順当な結果が出るとは限らない。
格下のチームが格上のチームに勝つことだってある。私はそういう場面が好きだ。
別に運まかせと言いたいわけじゃない。
運も実力のうちだなんて、一生懸命練習してきたみんなには絶対に言いたくない。
「それを言われちまうと、何も言えないよなぁ」
「でしょ? 次は絶対にリベンジしよう。勝てると思ってやらないと、楽しくないよ」
観念したようなため息とともにそう言った湊に、今度は畳みかけるようにすぐに言葉を返した。
「やるしかないか」
「そうそう。私も全力でサポートするよ」
私がぐっと握りこぶしを作ってみせると、湊は笑ってうなずくだけで、再び歩き始めた。
今はいいこと言ったんだから、お礼の一つくらいあってもいいのに。
なんとなく悔しかったから、下りに差し掛かったところで湊の前に出た。
そんな私を黙って見ているだけの湊は、次の上り坂に入ったときは、私の隣を歩いてくれた。
それからは野球の話はせずに、他愛のない話を続けて、気付けば私の家に着いていた。
その頃には陽はすっかり沈んでいて、あたりは暗くなっていた。
今日はいつもより時間がかかる帰り道だった。
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