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そして夏休みが終わろうとしている8月30日の事である。
僕は集落をまとめる神田さんの家に遊びに行っていた。
「楽(らく)、美味しい麦茶飲むか?」
「神田おじさん、ありがとう」
この山水神村の歴史が書かれた本を読んでいた僕は素直に頷いた。
「ねえ、神田おじさん。この神水って何?」
「楽も漢字が読めるようになったのか?凄いな」
「もう中学3年だよ。」
「そうか、そうか悪かった悪かった。そうじゃな、古くから言い伝えられている水で1月1日に神社の社の中にある器に水が溜まり、その水を飲むと不思議な力が宿ると言われているのじゃ」
「えっどんな力?」
「誰にも言ってはダメじゃぞ」
神田おじさんが僕に耳を近づけさせる様に手で招く、僕は緊張しながらおじさんの口元の近くに耳を傾けた。
「分からん」
「え~」
奥から神田おじさんの奥さんが現れる
「もう、楽ちゃんをからかったらダメでしょ!」
「いや~すまんすまん。楽があまりにも真剣だからふざけてしまったのじゃ」
「楽が持っている本に書かれている神水は、何百年も前から山水神村に言い伝えられている神話なのじゃよ」
「神話?」
「神様の話じゃ。昔、悪魔が村を襲い、神水を飲んだ若者が悪魔をやっつけたと言う話なのじゃ」
「悪魔なんて日本らしくない物語だね」
「そうじゃな。ただ悪魔と表現しているのは、疫病の事らしいのじゃ」
「そうなんだ。悪魔なんている筈が無いもんね。」
「そうじゃな」
神田おじさんが笑う。
「もし本当に神水があって、僕が神水を飲んで神様になれたらいいなあ」
「そうか、そうか。じゃあ1月1日になったら神社の社に置かれている器を見てみるのじゃ。もしかしたら神水が溜まっているかも知れんぞ」
凄い。
神田おじさんの話を聞いた時から、妙に胸が熱くなっているような感じがする。こんな気持ち初めてだ。
神田おばさんが笑いながら
「もう、からかったらダメだと言ってるでしょ!それに・・・」
「それに・・の後は何?」
?
神田おばさんは驚いた顔をして
「えっ私そんな事を言ったかしら?」
僕は笑いながら
「もう神田おばさん、物忘れが始まったのかも知れないよ」
「私はそんな歳では無いですよ」
そんな会話をしていると、横の家の田端さんが慌てた様子で神田おじさんの家に入って来た。
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