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「何が俺と詩音の事なんだ!お前が馬鹿な事をしたから、この村が大変な事になっているのじゃぞ!」
「山の湧き水は、お前達の物では無いだろ!俺はちゃんとこの周辺の山の権利を購入しているのだから、お前達にこの水を使う事をとやかく言われる筋合いはねえよ。それに水の力が無くなって困っているのは俺も一緒だ!」
「とにかく、詩音さんも困っているだろ!早くここから立ち去れ!」
「うるせえな!取り敢えずここは引き上げるけど、また来るからな!」
居間のドアが開き、40歳前後の中年男性が出てきた。
高そうなスーツに身を纏い、中肉中背で髪は金髪で柄が悪い。
僕はその男性と目が合った
「お前は詩音の子供か?」
「はい」
「お前もこんな村にいつまでも居たら腐っちまうぞ!悪い事言わないから母親と俺の所に来い!」
中から村の人達が出てきて、その男性を罵る。
車のエンジンが掛かり、この場を逃げる様に走り去って行った。
僕は家に上がり、居間に行くと神田おじさんが僕の所に来て話し始めた
「楽、お前は心配するな。俺達がついているからな」
いつもの穏やかな村の人々の表情では無く、みんな怒りに満ちた表情を浮かべていた。
どうしたのだろう?
藤山おじさんが話始める。
「10年前、森で行き倒れていたあいつを助けるんじゃなかった。まさか俺達の水を商売にしてしまうなんて思いもしなかったよ」
「今年は米も育たない。これもあいつが俺達の水を奪ったからだろう」
10年前の夏、藤山さんが山で衰弱して意識を無くして倒れていた男性を発見して村に連れてきた。その男性が金村である。
村人の手厚い看病により意識が回復して話せる様になった時に、倒れていた理由を聞くと、一人娘と森ではぐれてしまい、探していたのだと言う。
それを聞いて警察にも連絡して、警察や村人達が森を探したのだが結局見つからなかった。
1ヶ月以上に及ぶ探索であったが娘を発見できず、その間に金村の体は回復した。
長期化する操作の間をぬって金村は自宅に行くことになったのだが、売られている飲み物は村には無いので、水筒に水を入れて金村に持たせた。
それが間違いの始まりである。
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