十五歳

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「ねえ、アルゼ。……僕のことが、好き?」 「大好きよ、ヴィル」 「いや、そういうんじゃなくてさ……男と、女として」  青白いアルゼの顔が、すっと紅をさした、気がした。 「……好きよ」 「よかった……僕も、同じ」  氷の指を握りしめ、アルゼのくちびるに、ぎこちないキスをした。その冷たさを確かめるように、何度も、何度もくちびるを寄せる。  降りしきる雪の中。  凍てつく星々の下。  白々とした夜明け前。  僕らは数え切れないほどのくちづけを交わし、互いの温度を確かめ合った。 「ねえ、君の絵を描いてもいい? この前、美術の先生に腕がいいって褒められたんだよ」  屋敷にスケッチブックを取りに行き、氷の上に腰を下ろした。 「私は、どうすればいい?」 「じゃあ、座って……僕を見てて」  その姿はまるで、白銀の氷像だった。紙の上でアルゼの輪郭をなぞる。その存在の愛おしさに、胸が苦しくて泣きそうになる。 「――将来、画家を目指そうかな。この別荘で毎日、君の絵を描いて過ごすよ」 「それってすごく素敵」  向き合う僕らの間に、かすかに春の気配が混じる風が吹いた。柔らかに残酷に、僕らの肌を撫でていく。  心の中、強く願う。  春よ、お願いだからその足を止めて。彼女の身体を溶かさないで。一秒でも長く、彼女のそばに居させて。
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