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湖畔にて
翌日、ヨハンは大きなシャベルを背負い、再び湖畔の廃墟へと足を運んだ。湖の岸辺に大きな穴を掘り、その中に膨大な量のスケッチブックを丁寧に重ねていく。
この別荘は近々、業者によって取り壊される。放っておけば、このスケッチブックもゴミ処理場行きだが、それはあまりに不憫に思えた。
このスケッチブックは、全てを捨てた男が残した、唯一の財産なのだ。
ヨハンは掘り返した土をシャベルで戻し、小さな山に盛った。
ゴミに混じって燃やされるよりは、ここで朽ちて土となる方がよほどいいだろう。
「まるで墓場だな……アンドレセンさん、彼女とともに、どうか安らかに眠ってくれ」
屋敷の壁から剥がれ落ちた板切れに、ナイフで文字を刻む。それを山の上に立てかけ、十字を切った。
僕の優しい、冷たいアルゼに、このスケッチブックを捧ぐ
ヴィルヘルム・アンドレセン
完
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