99人が本棚に入れています
本棚に追加
物理的に、と言ったけれど、内面はどうなのだろうか。喫茶店の仕事もあるというのに毎食わたしの食事を用意してくれているし、体調にも気遣ってくれる。でも、それって彼氏というより母親みたい。手を繋いだことはある。ソファーで並んでテレビを見たりもする。だけど、類は本当にわたしのこと好きなのだろうか。付き合ってまだ二週間。いきなり同棲を始めたからには、いろんなことが一足飛びで進んでいくのかも、なんて期待と不安でいっぱいだった。それなのに、一向に距離が縮まない。ちっとも甘い雰囲気にはならない。
「キスくらいしてもいいのにな」
「え、してないの? 一緒に住んでるなんて言うからてっきり……」
「でしょ? わたしもそう思う」
「美結はしたいんだ?」
そう問われて頷いた。たぶん、一目惚れだった。心配そうにわたしを見つめた瞳も、しゃんと伸びた背筋も、ご飯が美味しいと伝えたときの嬉しそうな笑顔も、全部愛おしいのだ。だからこそ、困った顔も見てみたいし、悩みとか辛いことがあれば打ち明けてほしいとも思う。もっと類のことを知りたいんだ。
「それならさ、美結が押せばいいじゃん。まずはキスから。向こうも遠慮してるだけかもしれないよ?」
「……うん、そうだよね。頑張ってみる。ありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!