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第二話 蝴蝶組の若頭
「頭!若頭!!大変です!!」
大声と大きな足音が鳴り響く細い廊下、
その足音はあかりが灯ったひとつの部屋の前で止み、襖を大きく開けた。
「若頭!大変です!また瓶髄組の野郎が!」
「騒がしいぞ霧島、迷惑だ。一度襖の前で声をかけろと何度言ったらわかる。」
大柄な男の言葉をさえぎり、
冷静な声でそう答えたのは、
巷で有名な組、蝴蝶組の若頭 蝴蝶引佐 。
鈴木引佐のもうひとつの姿だ。
「で、なんの騒ぎだ。叔父貴には話したのか?」
読んでいた小説から目を離さないまま、引佐は霧島に聞いた。
引佐は霧島の方を一切見ない。
「いえ、まだ…組長は今、何かの会議に出てて…すんません!若頭の手を煩わせることになって、」
引佐は小説をそっと置いて、正座で震えている霧島を見た。
「別に貴様が謝ることは無い。これも、蝴蝶組若頭の仕事だ。しかし…また瓶髄組か。厄介事にならなければいいが、何が起きたんだ?」
「それが…」
霧島が口を開こうとするとまた、大きな足音が近づいてきた。
「若頭!大変です!!瓶髄組の野郎が組長を出せって!奴らの組長は見られませんでした!」
「はぁ、また厄介事になったな。組長は今留守だと追い払え!それが貴様らの仕事だろう?」
「なっ!今、これも若頭の仕事だって…」
「つべこべ言うな!さっさと行け!」
「「はっ、はいぃ!!」」
ドタバタと足音が小さくなったのを確認して引佐は襖を閉めた。
「瓶髄組…。蝴蝶組にやたらと関わってくる面倒な組だ。叔父貴に何もなければ良いが…」
引佐は考えながら、もう一度小説を開いた。
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