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第三話 組長会議
「何?組長会議を行うだと?しかも、蝴蝶組と瓶髄組の組長同士で?」
ワイシャツを脱ぎながら、霧島の知らせにややキレ気味に返す引佐。
瓶髄組とのいざこざから3日すぎての事だった。
引佐の反応にややビクつく霧島は話を続けた。
「ヒッ、はっはい…そこには組長と瓶髄組は若頭を連れてくるとか…ヒッすいやせん!怒らねぇでくだせぇ!」
鋭い眼光を向けた引佐に怯え震え上がる霧島。
「瓶髄組の若頭だと?そういえば私と同じくらいの歳の奴だと聞いたことがあるな。」
思い出したように考える引佐。
部屋着に着替え、明日の支度をする。
「よしっ、霧島!決めたぞ!」
「ヒッ!はっはい!なんでしょう??」
いきなり大声で話しかけられ霧島がびくつく。
「私もその組長会議に参加するぞ。叔父貴の付き添いとしてな、奴等の若頭にもひとつ同じ若頭としてヤキ入れておかねぇとな…」
引佐の不敵な笑いに少し失神しそうになる霧島は、急いで部屋を飛び出したのだった。
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組長会議当日。
車を家の前で待たせ、引佐は車の扉を開ける。
「叔父貴、おはようございます。今日は組長会議ですが、大丈夫ですか?」
深々と頭を下げ、組長に挨拶をする引佐。
その引佐に向け、組長が話す。
「心配いらねぇよ。引佐。お前は相変わらずの心配症だな?俺を誰だと思ってるんだ?蝴蝶組組長、蝴蝶 雅だぞ?」
そんな力強い言葉に胸を打たれ、ひとり震えている引佐。
「今回会議が行われるのは瓶髄組の屋敷。注意深くしなければこっちがやられる。今日こそケリをつけてやる。覚悟しとけよ瓶髄組…」
そう、決心する引佐は組長が車に乗り込んだのを確認し、扉を勢いよく閉めた。
瓶髄組の屋敷に到着するまで、良い案は無いかと試行錯誤していた引佐だが、瓶髄組は蝴蝶組の近くにあり、思った以上に早く着いた。
車が確実に止まったのを確認すると、車をおり、組長側の車の扉を慣れた手つきで開ける。
「さっき降りた時に少ししか見れなかったが、瓶髄組の組長と若頭が表にたっていたな。わざわざ出迎えとは気色が悪い…」
そう小声で呟いたが、誰にも聞かれはしなかった。
組長が降り、瓶髄組の組長と何やら話をしているようだが、話の内容が難しすぎ、よく聞き取れなかった。
扉を閉め、雅の隣にたつ引佐。
そこには、グレーの袴に薄緑の袴を着た、瓶髄組の組長らしき男と、サングラスに黒マスクで髪をオールバックにした若い男が見守るように立っていた。
多分、あいつが若頭だろうと確信する引佐。
しかし、その風貌はどこかで見たような気がしてならない。
それに、若頭らしき男が、引佐の方をずっとみている。
引佐はボソッとつぶやく。
「なんだ?この違和感は…」
「そっちに居るちびっこいのが、そっちの若頭か?こっちのとは比べ物にならんぐらいひょろひょろじゃねぇか。えぇ?ちゃんと食わせてんのか?」
引佐の方をまじまじと眺めながら顎に手を当て問いかけてきた瓶髄組の組長を引佐は睨みつけた。
ちびと言われたのに腹がたったのだろう。
「まぁ、そう睨むなって、立ち話もなんだ、入れや。」
瓶髄組の組長に促され部屋に連れられる引佐と雅。
その間も引佐は警戒を解いてはいない。
部屋に着いた一同。
部屋の中には若頭2人と組長2人の計4人。
外には瓶髄組が何人かいるような状態。
引佐は雅の斜め左後ろに座る。
瓶髄組の組長と若頭も同じような状態だ。
瓶髄組の組長が話し始めた。
「すまねぇな。急に呼び出しちまって、お前んとこに、ちと瓶髄組の新人が世話になったらしいからな。話がしたかったんだよ。」
そう言いながら、タバコに火をつける瓶髄組の組長。
それをなにかの合図かのように雅は、
「すまねぇ引佐。ちょっと外してくれねぇか?」
雅は引佐の目を強く見てそう言った。
引佐は立ち上がりながらすぐに答える。
「叔父貴がそういうなら異議はない。」
すると、瓶髄組の組長が、若頭に向けて、
「てめぇも席外せや。そこのちびっ子に別の部屋案内してやれ。」
と、新しいタバコを取り出しながらそう言った。
相変わらずサングラスとマスクでいまいち表情が読み取れない。
若頭は軽く頷き、襖の方に歩き、引佐に着いてこいと合図をした。
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