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第七話 告白の真相
日向の予想していなかった質問に自分でも聞いたことの無い声が出たことに驚き、咄嗟に口を押え、後ろを向き自分に言い聞かせた。
「落ち着け、落ち着くんだ引佐…まだ、瓶髄組の狙いもわからない状態で、こちらの隙を見せるのは適作では無い。あの油断させる言葉はきっと、こちらの情報を引き出すための罠。信用できるか出来ないかは、自分が決めるべきでは無い…だから…」
ブツブツと独り言を喋っていた引佐には、
後ろから日向が近づいてきたことに気づかなかった。
このままでは埒が明かないと、日向は引佐の肩をグッと掴み自分の方を向かせた。
「ッツ!!」
「あんましウジウジしないで、こっちみて話聞けよ。」
引佐は俯いて返事をしなかった。
日向は引佐の肩から手を離し、構わず話を続けた。
「引佐のことは瓶髄日向としても、高木日向としても好きだった。本当だ。入学式のとき、気さくに話をしてくれたお前のことがだんだん好きになった。始業式の時の告白も勇気が言ったんだぜ?ましてや男同士だからな。友達関係が壊れることを考えると震えが止まらなかった。でも、それ以上に伝えたかった。キザかもしれねぇけど、本当にお前を好きだったんだ。」
引佐は静かに聞いていた。
俯いた状態で。
しかし、その肩は少し震えていた。
日向は頭を軽く掻き、
「…悪かったな。急にこんな話して、まだ時間はあるけど、教室に戻るか。」
引佐の肩を軽く叩き、横を通り過ぎようとした日向に、
「…待って。」
引佐は日向の裾を軽く引っ張っていた。
その行動に驚いたのは日向だけではなく、
引佐自身も驚いていた。
パッと手を離し、意味もなく軽くさすった。
同様で目の視点が合わない。
呼吸を整え、一歩下がり恐る恐る問いかけた。
「…君は私にこう問いかけたな。若頭と知って嫌いになったかと。私は嫌いにはならなかった。でも君はどうなんだ?気さくな鈴木引佐が、敵だと思っていた蝴蝶組の若頭と知って、考えが変わったのではないか?だいたい…」
引佐が何か言いかけた時日向が引佐の腕を引っ張り自分のほうに寄せて抱きしめていた。
「なっ!何をしているんだ!人が話している時に失礼だ…」
「んなわけねぇだろ。」
静かに日向は答えた。
それは怒っているような泣いているような声だった。
引佐が口を閉じるのには十分すぎる返事だった。
引佐はどうすれば良いかわからず固まってしまい日向は動く気配がなかった。
それから何分経ったか。
いや、それほど時間は経っていないかもしれない。
引佐が硬直していると、日向がバッと顔を上げ涙目で訴えるように話し始めた。
「俺は引佐の全てに惹かれたんだ、容姿も性格も全部だ。若頭としての君を見た時もその気さくさや性格はひとつも消えていなかった。人を誤魔化すことは出来ても中身を変えることは出来ないんだよ。それを分からない君はまだまだダメだな。」
最後の言葉は強がりのようなものだった。
半ば早口で裏返った声になってしまった日向は鼻をすする。
しかし、最後の言葉にカッとなったのか、はたまた照れ隠しか、日向の顔にグッと近づき、大きく息を吸い不満をばら撒くように、
「…ばぁーーーかっ!それは私も同じだよ!君を玄関前で見た時に気づけなかったのはショックだったが、性格は変わってなかった!ちょっと髪型を変えたくらいじゃないか!性格や口調が変わっただけで、優しい部分は何も変わっていないじゃないか!どこに君を嫌いになる要素があると言うんだァ!」
はぁーはぁーっと、呼吸を整えている引佐を見て日向は唖然としていた。
まさか、こんなに気持ちをぶつけられるとは思っていなかったからだ。
それに…
「まさか、引佐が俺のことをそんなふうに思ってくれていたとは…」
その言葉を聞いた引佐はカァーっと耳まで赤くなるのを自覚し、肩の震えが止まらなかった。
照れ隠しに、日向に何か言ってやろうと引佐は日向を見た。
そこで、引佐はフリーズした。
肩の震えすら忘れて、日向を見た。
今まで動じることのなかった日向が腕で口を押え、その顔は引佐と同じように耳まで真っ赤になり、恥ずかしそうに目線を逸らしていた。
引佐と日向はそれから何をいえば良いかわからず戸惑っていると。
校舎から予鈴が聞こえた。
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