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茉莉花の失恋1
夏の始まりになるのだろうかという空の下、いつものように私は大学の授業へと向かった。
「おつかれ!席、ありがとう」
友人の綾美が声をかけてくる。
「うん、貸しイチね」
そう答えると綾美は、わかってるってと言いながら私がとっていた席に座った。
綾美の横顔はいつ見ても凛としていて、綺麗だ。そんな風に思える友人がいることは勝手に心の片隅の小さな自慢だ。
彼女とは大学1年の教養の授業で同じ班だったことで仲良くなった。
「茉莉花、今日授業の後、予定ある?」
「あー、うん」
その答えに綾美が少し呆れた顔をする。
「またあの人?」
そう聞かれるので苦笑いをして頷く。
「もう、いい加減にした方が良いんじゃない?遊ばれるだけって辛いだけじゃん?」
その言葉は自分の心には痛かった。
けれど、辞められない。自分を止められないんだ。そんな自分が不甲斐ないとは思う。
「わかってるんだけどさ」
「実らない恋なんでしょ?さっさと捨てて次行こうよ」
その言葉に曖昧に笑いながら頷いた。
その日の授業は全然面白くなかった。
そもそも大学に入ってから面白いと思える授業は数えるほどだ。
けれども自分で選んだ大学、学部だ。
なんとか面白さを見出さなければと思いながら大学に通っているのはきっと周りのみんなも同じだろう。
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