その2:大勝負の舞台裏

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 女性教師はそう言うと、インカメラの角度を変える。  アキト側の画面いっぱいに、豊かな胸が作り出す縦方向の深い谷間が映し出された。  彼に鑑賞する時間を与えているつもりなのか、画面はしばらくそのままだった。10秒ほどたつと角度が戻り、よそ行きのメイクに包まれた顔が再び映る。 ”じゃあ、お風呂チャレンジがんばってね” 「おう」  女性教師の直接的な誘惑にも、アキトは全く動じない。  続いて彼は、ずらりと並ぶ連絡先のうち、女性教師ではなく女子生徒のIDを選んで電話をかけた。  アキトが通話に用いているのは、スマートフォンが本来持っている電話機能ではなく、ショートメッセージアプリである。  このアプリは、互いのIDさえ知っていれば無料でビデオ通話をすることができるのだ。  つまり学校の女性たちにとって、アキトのIDを知ることは彼と通話する権利を半分得るようなものだった。  アキトにとっても、気に入らなければブロックすればすむので都合がいい。 ”は、はいっ、もしもし!”
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