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自分の行動がユウカをおびえさせていると気づくことができず、だからこそ彼女にいたわりの言葉をかけることもできない。
彼はただ、想いを伝えるので精一杯だった。
「す、好きです! 付き合ってください!」
マサオは深く頭を下げ、まぶたを固く閉じる。
その顔に、期待の類は全くなかった。
だらしなく太った体とお世辞にも麗しいとは言えない顔立ちを、彼は自覚している。告白という一世一代の大勝負が、負け戦であることを覚悟していた。
真っ暗な視界の中に靴裏と土がこすれ合う音を聞いても、あわてて顔を上げたりはしない。
その音が自分から離れ、彼女の気配が完全になくなったら、ひとりで泣くつもりだった。
しかしその予定は少しばかり変わる。
靴裏と土が生み出す音は一度短く聞こえただけで、離れることなくすぐに消えてしまった。
マサオがそれを不思議に思う間もなく、ユウカの声が耳に飛び込んでくる。
「あ…あの、ね」
「……」
「わたし、あなたのこと…まだよく知らないから」
「………」
マサオは頭を下げたまま、まぶたを閉じたまま微笑んだ。
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