その1:一世一代の大勝負

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 自分の行動がユウカをおびえさせていると気づくことができず、だからこそ彼女にいたわりの言葉をかけることもできない。  彼はただ、想いを伝えるので精一杯だった。 「す、好きです! 付き合ってください!」  マサオは深く頭を下げ、まぶたを固く閉じる。  その顔に、期待の類は全くなかった。  だらしなく太った体とお世辞にも麗しいとは言えない顔立ちを、彼は自覚している。告白という一世一代の大勝負が、負け戦であることを覚悟していた。  真っ暗な視界の中に靴裏と土がこすれ合う音を聞いても、あわてて顔を上げたりはしない。  その音が自分から離れ、彼女の気配が完全になくなったら、ひとりで泣くつもりだった。  しかしその予定は少しばかり変わる。  靴裏と土が生み出す音は一度短く聞こえただけで、離れることなくすぐに消えてしまった。  マサオがそれを不思議に思う間もなく、ユウカの声が耳に飛び込んでくる。 「あ…あの、ね」 「……」 「わたし、あなたのこと…まだよく知らないから」 「………」  マサオは頭を下げたまま、まぶたを閉じたまま微笑んだ。
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