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ユウカはうつむきがちにアキトへ近づく。
アキトは慣れた手つきで彼女のあごを持ち上げると、キスをした。
それはただ触れ合うだけのものではない。奪い奪われる、肉食獣の食事を思わせるような激しいものだった。
「はあっ…!」
離れると、ふたりの間に唾液でできた輝く細い橋がかかる。熱い吐息が互いの顔をなでた。
その時、窓の外から叫び声が聞こえてくる。
「やったぁあああああああ!」
窓の外には体育館があった。
ここからでは角度が悪く裏側の様子はわからないが、その声がマサオのものであるのは間違いなかった。
アキトは窓に顔を向け、体育館を眺める。
「くくっ…慎ましいもんだな、キモブタ野郎がよ」
何も知らないマサオをせせら笑う。
ユウカは、キスによる興奮と申し訳なさが混ざった表情を浮かべながらうつむいた。
>『その2:大勝負の舞台裏』へ
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