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その2:大勝負の舞台裏
アキトは、誰もがうらやむ美貌を持っていた。
高校に入学してすぐ全学年女子に注目され、夏休み前には全員の心を盗み終えたという。
その勢いはとどまるところを知らず、女性教師たちの心をも飲み込んだ。アキトが2年に上がる頃には、母親どころか祖母と呼んで差し支えないほどの年齢に達した女性教師まで、彼を見ただけで女子生徒と同じくらい顔を赤くするようになった。
アキトは学校という世界の半分、女性全てを手中に収めていた。
「撮ってきたよ、アキトくん!」
肌を黒く焼き派手なメイクをした女子生徒が、スマートフォンを彼に差し出す。
アキトは黙ってそれを受け取ると、画面を見た。
画面の中には、廊下で談笑する3人の男子生徒が映っている。
「どれだ?」
「一番デブでブサイクなヤツ」
「こいつか」
アキトの目が、中央にいるひとりを捕捉する。その男子生徒こそがマサオだった。
彼の醜く太った容姿を、アキトは鼻で笑う。
「フン…こいつなら、間違ってもユウカがなびくことはないな」
「ね、ねえ、アキトくぅん」
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