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「朝陽の所為にするつもりは無いけど、なんか告白されてるとき君の顔思い出しちゃって」
適当にしてるつもりは無いんだけど、ちょっとね。
そう佐久間さんは言ったけれど、それほどの価値が自分にあるとはどうしても思えなかった。
「だって、あなただけが部活でやっかみを受けてなかったし、いつも教室でもどこでも周りに穏やかな人ばかりいて、その中心にあなたはいたじゃないですか!!」
普段声なんて荒らげないのに思わず叫ぶ様に言ってしまう。
「別に、朝陽だって穏やかに暮らしてるだろ」
「おれは静かっていうか、たんにぼっちなだけですよ」
ふふっ、と佐久間さんは笑う。
俺よりよほど綺麗だと思う笑顔だった。
「それとも、俺が自棄でも起こしてると思ってる?」
首を横に振る。
今はそういう風には思っていない。
「ねえ、俺が気にしてない俺のことよりもさ」
佐久間さんの目尻がまだ赤い気がする。
「飴ってあのレモンの?」
ああ、この人もあんな瞬間を覚えているのかと思う。
恥ずかしい。
なんでそれを言ってしまったのだろうとも思う。
これじゃあ、気持ちを伝えてしまったも同然なのだろう。
敏い人だ。多分何もかも気がついているのだ。
だから、足を止めてこちらを見ている。
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