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けれど、この人がこれ以上俺の言葉を待っているようには見えなかった。
別に言葉にしなくても良かったのかもしれない。
「……負け犬の遠吠えみたいなもんかもしれないですが」
ランニングマシンを降りて、トレーニングルームの扉に向かう。
部屋を出る前振り向くと佐久間さんはぼんやりとこちらを見ている。
「結構前から、佐久間さんのこと好きでした」
言い逃げみたいにそのままトレーニングルームを出てしまう。
「え?ちょっ!?待ってよ、え!?」
部屋の中から今度は佐久間さんの叫び声が聞こえるけれど、今顔を合わせるのはちょっと俺には無理だ。
ロッカールームまで走るとそのまま通学バッグに制服を放り込んで寮の部屋まで走ることにした。
だけど、寮の建物のちょっと手前で、佐久間さんに肩を掴まれてしまう。
「先輩の脚力なめんなよ」
「っていうかカバンは!?」
「制服と鞄は明日取りに行く。こっちは消灯して鍵まで閉めてきてるんだ。
無理に決まってるでしょ?」
でしょ?って言われても、わざわざそんなに急いで追いかけて来なくてもいいのに。
俺も佐久間さんも息が上がってしまってる。
「ほら、少し笑顔」
佐久間さんが俺の唇にそっと触れる。
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