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キャンディ
昔から、横断歩道の白い部分だけ選んで走ることが好きな子供だった。
ゲームをするときのアイテム禁止みたいな縛りプレイが好きなのかもしれない。
だから、好きな人ができたといっても、言ってはいけない事が一つ増えて、視線に気が付かれないという縛りができた位の感覚だった。
周りの人を見ていると、恋ってものはそういうものじゃないって感じがする。
もっと自分自身を見失うみたいな、そういうものが本物の恋なのかもしれない。
◆
「ねえ、走るときって何を考えてる?」
休憩中、佐久間さんが俺に聞いた。
横断歩道の白い部分だけを渡る感触だ、と言っても多分理解されない気がした。
ちらりと彼の表情をうかがう。
「佐久間さんは何を考えていますか?」
答えられなかったので同じ質問で返してしまう。
コーチから競技の前に考えない方法はメンタルトレーニングの一環として教わっていた。
たぶん、そういう意味で後輩が何を考えているのか知りたいのだろう。
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