冷たい人【BLのほう短編】

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◇◇◇  バレンタインだ。  鈴原さんにチョコをもらった。手作りらしい。開けて食べた。おいしかった。ほろ苦いトリュフ。つられてほろ苦い気分になった。  毎年智司にチョコを取られた。まあ、俺が勝手に渡してただけだけど。今年は俺に彼女ができたことは知れ渡ったから、鈴原さんからしかもらってない。だから智司に別ける分はそもそもないんだ。  そういえば今年はクリスマスも鈴原さんとデートした。いつもはどうしてたかな、智司を無理やり誘ってカラオケとかしていた気がする。初詣も鈴原さんと行った。去年の初詣は確か、智司と。  智司とはしばらく会っていない。智司、何してるかな。智司との距離感。俺が空けた。  俺と智司はもともと『幼馴染』だ。鈴原さんは別に束縛は強い方くない。学校でも友達と普通に話してる。だから別に俺が智司に会うのに問題はない。『幼馴染』に会うなんて気にもされないだろう。気にしてるのは……俺だ。  俺は智司に会えなくなっていた。俺から追いかけないと接点はない。だが何故だ。関係が以前と違う、あの日から。そんなふうに感じた。  会えないと、智司のことが頭に浮かぶ。でも智司に会いたいと思う気持ちには違和感があった。俺は智司に会ったら、どうしたいんだ。どんな顔して会えばいい。会って、それで。わからない。  そもそも、会う理由がなかった。理由。バレンタイン。今年は余剰がない、悪いな。……それなら。理由に、なる。  気が付いたら走り出していた。鈴原さんには急用ができたと言ってチョコのお礼を言って。  智司はいつも通り本屋とカフェの間をフラフラしていた。
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