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人と人との争いは、この世界を支配する神と呼ばれるもの達によって行われていた。 それは特に一年前に神の世界で一番力を持ち、神も人も全て支配していた大神の存在が息子である戦神に打ち倒された事で激化した。 戦神が打ち倒した際、大神がすでに神の雫の半分を失っていた為だった。 人間の地に置いてきたとの事だ。 神の雫は神の体内にあり、胸を貫く事で他の神のものを手に入れられ、多ければ多いほど世界を支配するに相応しい神となれるもの。 戦神が大神を打ち倒せたのも、半分を失っていたせいもあるだろう。 大神の神の雫は全て手に入れられれば、神々のみの世界を造る事も、この世界の神をひとりだけとする事も、どんな事でも可能となるものだった。 大神を討ち取った戦神も行方知れずとなり、神の雫が半分無いと知れ渡った神々の地は、その半分をどこぞの神が支配している人間達がその半分を所有しているなどという噂まで出回るほど疑心暗鬼となったのだ。 そもそも、神々にとって人間は大神が暇つぶしに作った不出来な人形に過ぎず、それらは他の神々にとっても暇つぶしの人形となり、それぞれの神が集落や種族ごとに所有、支配し、信仰させ、貢物や生贄を捧げさせ、一番神々にとって面白く感じる、人形同士の戦争をさせた。 大神を倒した戦神が行方知れずなこと、大神の神の雫が半分無い事など人間達に、悟らせたくは無い。何処かの集落や種族がその秘密を知り、広め、神に所有されて支配される事を良く思わない人間に、徒党を組まれても面倒だという事で、関心を他所へ向けるため、神々が人間達にさせる争いは激化していった。
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