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力の神の戦士達を打ち倒した帰り道、 「多かった力の神の集落の戦士達も残りは少ないな」 「そうだな、恐らく今月中に戦士達は殲滅出来るだろう。そうなれば、戦士を失った集落は戦神のものとなるか、集落の者達も殲滅させられる事になるかは分からないが、今戦神は居ないし、居たところで興味があまり無いのか今まで具体的な指示がただ事も無いからな。きっと今回も何も指示は無く、我々の集落で管理する事になるだろう。その方が女子供を虐殺させられるより気が楽だ」 「そうか、そうだな。ところでフェルムよ、集落に帰ったら其方は長の娘といよいよ婚約するのだったな」 前を歩くヴィアが振り返って揶揄うような笑みを浮かべて言う。 「ああ、あんな美しい娘がオレのような醜い男の嫁になるなど、全く実感がないがな」 「お前が醜いだと?」 「醜いだろう?髪の色は白く、小麦色の肌をし、目は紺色、人々が崇拝する神々の容姿とは似ても似つかない。取り柄は戦える事だけだと、よく集落の娘どもが口にするのを聞いている」 神々に似た容姿、即ち、白い肌で髪の色は神に一番多い金や銀、戦神の赤や女神に多い青、目の色は金と銀は勿論、やはり戦神の空色や女神に多い薄い緑など、両方の色やどちらかの色を持てば美しいと持て囃される。 戦神は名のある神々の中で勢力を拡大しているし、フェルムが居る集落の神だから人気なのだ。 そもそもあまり神にお目に掛かれた者は居ない。 恐れ多く、触らぬ神になんとやらだ。 だから神の容姿や指示などは集落の神官を通して集落に広まる。 「お前が醜いなどと、そんな事があるわけが無い」 「いや、だが……」 立ち止まったヴィアは、立ち止まったせいで歩いていたフェルムと距離が縮まったのを利用して手を伸ばし、肩まである髪に触れ、 「白い髪は柔らかく俺の指に絡み」 頬に手を滑らせ、 「小麦色の肌は裸になった時の白い部分とのコントラストが美しく、触れればいつだって俺の掌に吸い付くよう」 目元を少し表面がざらつく親指でなぞり、 「紺色の瞳が映す世界を全て守ってやりたくなるほど綺麗だ」 と言って微笑んだ。 それを聞かされて触れられたフェルムは、長の所の美しい婚約者と初めて会った時すら感じた事のない、鼓動の高鳴りと身体の奥が熱くなるのを感じて、思わずヴィアの触れる手に手を重ねて、身体の芯を支配しつつある熱の塊をどうにかしたくて、衝動のままに何か行動に出ようとした所だった。 少し離れた場所で閃光と轟音が響き渡った。 「っつ!!」 ヴィアがそちらを睨みながら強い風圧からフェルムを庇うように腕の中に仕舞い込む。 「な……んだ!?」 光が消えると現れたのは青いローブを纏った銀色の目の初老の男。 「お言いつけ通り、一年待ってもお帰りになられない為、お迎えに上がりました戦神様」 「ヴィアが戦神だと?何を言って……」 だが、ヴィアは腕の中からフェルムを放して離れると一瞬だけ胸を押さえて蹲り、フェルムが心配して駆け寄るよりも早く立ち上がると、全身から一度光の粒子が放たれ収まった。 「どうした?ヴィア?ヴィア……?」 「ヴィア、ヴィアと、貴様が勝手に付けた名で俺を呼ぶでない、人形風情……。しかし、まあ、世話になったのも事実だ。戦士としても見所がある。不敬は許してやろう」 ヴィアの目は冷たいというよりも、本当に取るに足らない石ころや草を見る目をしている。 「い、くさ神様……なぜ?」 本来であれば両手と両膝を地面に着き、地に額をつけ、許しが無ければ離すことも出来ない身。 「人形よ、無礼である」 ローブを着た男が指を振り上げ何かしようとしたのをヴィア、戦神が遮った。 「よせ、不敬は許してある」 慌てて恐怖は感じていないのに震える両膝を折り曲げて地面に着き、神に対する礼を取った。 「では、神の国へ戻るぞ、セオよ」 「はっ」 戦神はセオと呼ばれた男と共に光となって消える前に、 「……もし、何か知りたい事があれば一年後に俺が開催する、力を競う祭りで選ばれた人形を招待する事になっている。お前が神の国にまで名を轟かせる程の強い戦士となれたならば、招待してやろう」 そう言い残して消えていった。 残されたフェルムは、ヴィアが戦神だった驚きよりも、二人だけで楽しく暮らしていたヴィアを、奪われたような悲しみと虚しさで胸がいっぱいだった。
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