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フェルムは当然、戦神主催の戦士達の力を競わせる祭りに参加した。 戦神を崇拝する集落で一番の実力者はフェルムだ。 迎えに来た使者に連れられ、神の国に赴き、大神となった戦神の開会の宣言を聞く。 遥か遠い場所から神に対する礼の姿勢をとりながら、一度だけこっそりと顔を上げ、チラリと戦神であるヴィアの方を見れば、目がズバ抜けて良いフェルムにはヴィアと目が合い、ニヤリと笑ったのが見えた。 戦いは全ての戦士が一斉に戦い、最終的に集落の多くの戦士達の中で、力の神の集落の戦士とフェルムだけが残り、フェルムが今回選んだ武器である双剣で相手の喉を掻き切り勝ち残った。 いつだって神々に振り回された戦いばかりだが、こんな茶番で多くの戦士の命を奪うなど心が晴れない思いだったが、戦神となってしまったヴィアともう一度だけ話をしたいという思いだけでここまで来て優勝したのだ。 神にとっては人形とはいえ、優勝者は特別に戦神の近くまで来ることが許され、礼の形を取らなくても良いという許可を出された為、豪奢な椅子に威厳を持って座るヴィアの前にフェルムは立った。 「よく来た。お前は俺の期待通りの男だという訳だ。約束通り10番目の妹神を嫁としてくれてやろう」 「いえ、恐れながら申し上げます。私には今年祝言を挙げる予定の婚約者が集落におりますので、そちらは辞退させていただきたく存じます」 真っ直ぐにヴィアの冷たい目を見て断った。 「ほぉ…、人形如きが俺の決定に従えぬと言うのか。ならば、俺とこの場で戦い、お前が勝てば認めてやろう。負ければ大神の俺に逆らった罰として処刑だ。なに、神の力は使わずお前達人形と同じレベルに落ちて戦ってやる。あの頃のようにな」 ずっと変わらない冷たい目と声に、もうヴィアなど居ない、戦神と彼らにとってただの人形である自分とでは、それこそあの頃のように対等に話す事すら出来ないのだろうとフェルムは悟り、 「はっ」 短い返事を返した。
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