空の下で

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空の下で

冬空の下、僕の心は温かかった……。 僕は、公園のベンチに座り冬の空を眺めていた。 枯葉や、枯れた木、息をする度に鼻の奥が冷たくなる。 冷たい冬の風が、僕の肌を撫でていた。 周りには、バスケットボールをしている少年達が叫びあっていた。 「 空、すき? 」 後ろから、誰かに声をかけられた。 振り向いた僕は、君だとすぐにわかった。 その声をかけてきた彼女は、昔に少し話をしたことのある移動販売をしている彼女。 冬の間だけ、この公園に来ていた。 「 君の写真見せてくれる? 」 僕は、カメラを持ち空の写真や季節を感じさせるものを撮りに、昔からこの公園に来ていた。 僕が持ってきていたアルバムを彼女に見せることにした。 「 つめたっ!」 彼女の手は、氷のように冷たくなっていた。 「 私、すぐ手が冷たくなるんだ、ごめんね 」 そんな彼女は、僕が撮った写真を笑顔で楽しそうに見てくれている。 僕はなんとなく、嬉しくなっていた。 「 この写真、一枚貰っていい? 」 彼女は、そう言うと一枚の写真をアルバムから取り出し、移動販売の車へと戻って行ってしまった。 不思議な彼女の笑顔とオーラみたいなものに僕の寒かった心が温まっていく音を感じていた。 次の日も、その次の日も彼女に会いたくてたまらなくなってしまっていた自分がいた。けれど、その移動販売の車も彼女の姿ももういなかった。 僕は何かわからない胸騒ぎみたいなものに襲われていた……。その彼女の事が気になり何度も何度もその公園へと行った。 あれから、何日経ったのだろう。僕はそれさえもわからなかった。いや、わかりたくなかったのかもしれない。 その日の夕方、もう一度あの公園に行った僕は、移動販売車を見つけた。 彼女が乗っていた車とは違っていたけれど、僕はその車へと駆け寄り、中にいる人に話しかけていた。
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