お見舞い

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お見舞い

「さとちゃん!」  ドンドンドン  ドアドンドンドン 「さとちゃーん! ねぇ、お願い。開けて!」    ドンドンドンドア  ドンドン…… 「……お母さんは……うぅ……さとちゃんの……ぐすっ……味方だからね……!」  ……ガチャ 「いや俺べつに引きこもってねーから! さっと入ってこいよ」 「さとちゃん……!」 「あと親のポジショニングでしゃべんな。お前ただのクラスメイトだろ、本当の親どうした? 俺の親」 「ちょっと出かけてくるから留守番お願いねって……」 「はぁ……。コイツに頼むなよ」 「いやww べつに僕に言ったわけじゃww 貴方に向かって言われてましたけどww 僕のことは怪訝そうに見て素通りでしたわww」 「じゃあ早く帰れよ、しばくぞ」 「だって用事があるのに中々出てきてくれないから。帰りたくても帰れなかったんだよ……」 「わるかったよ、音楽聴いてたんだ。で、なに?」 「いやね、誰かこれをさとちゃんに渡してくれって先生が」 「ああ、ありがと。……なにこれ?」 「進路志望調査のプリント」 「別に今日じゃなくてもよくない!? 明日でもよくないそれ。……生徒に渡してまで届けるやつじゃねーだろ」 「いや、明日〆切だから」 「明日〆切なの?! 今日配られて?!」 「なんでも先生、バタバタしてたから一ヶ月前に渡しそびれてたらしいよ」 「渡しそびれんなよ。こんな大事なもん……」 「生徒が言うんだww そのセリフw」 「その斜に構えた感じやめろよ、お前ほんと」 「でもさ、さとちゃん」 「なんだよ?」 「進路、どうするつもりなの?」 「ああ? ……お前に関係ないだろ」 「でもお母さん。さっきお邪魔した時すごい心配してたよ」 「……なんて言ってたんだよ。うちの親」 「クソババアって言わないし、母の日に料理を作ってくれるから心配だって……」 「なんでだよ! 母親冥利に尽きんだろ。そっとしといてくれよ」 「心配なんだよ。一人で抱え込んでるんじゃないかって。ほら、さとちゃんってなんでも一人で抱え込んで一人で解決しちゃう所あるじゃん? 頼って欲しいんじゃない? 親御さんもさ」 「……」 「それに、さとちゃんのことだから「第一希望:天下人」って書きそうだしね」 「お前俺のこと小学生だと思ってる? ……普通に近所の公立目指すよ」 「でもあそこ……」 「偏差値高いってか。ハッ、なめんな。お前より頭いいっての」 「いや、あそこ来年立て壊すよ」 「来年立て壊すの?! マジで?! 初耳なんだけど」 「あそこの理事長と校長先生が話してた」 「なんで理事長と校長の会話聞いてんだよお前」 「ああ、それは面白い噂があったもんだから。さとちゃんちに行く前に寄ってみたんだよ」 「面白い噂って?」 「あそこの保健室の先生と生徒が……ふふw いやw まあww ……ね。だから」 「思春期拗らせすぎだろ。寄るなそんな理由で」 「まあ、なにわともあれ。さとちゃんがちゃんと将来を考えてるなら僕は満足だよ」 「……松永」 「なに?」 「……ありがとな」 「ええ? なになにww 急に改まってww」 「お盆にわざわざ来てくれて」 「…………」 「心配してくれたんだろ。俺のこと」 「……一緒にユーチューバーになれなくてごめん」 「気にすんなよ。元気そうでよかった」 「ありがと……。じゃあ、もう帰るね」 「来年は?」 「?」 「来年は……帰ってこないのか?」 「来年って、さとちゃん受験生じゃん。邪魔しちゃ悪いよ」 「なにらしくないこと言ってんだよ。……俺たち、友達だろ」 「……来年も、帰ってきていいの?」 「ああ、もちろん!」 「じゃあ、来年は夜食作ってあげるからね!」 「いや親失神するわ!」
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