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亜沙美へ
今亜沙美がこの手紙を読んでいるという事は、俺はもう死んでいるのだろう。
俺はずっと家族に秘密があった。母さんにも、亜沙美にも。
特に亜沙美に関する秘密なので、俺はその秘密について亜沙美に向けて書き記そうと思ったら。
実は俺は母さんと出会う前、あさみという人に恋をした。
その人が忘れられず、俺はあさみによく似た母さんと結婚した。
そして生まれたお前に亜沙美と名付けた。
俺にとって、あさみとの出会いは衝撃だった。
俺の人生の一部の記憶としてどうしても書き留めたかったんだ。
もし、これ以上知りたくないなら、手紙をそのまま処分してほしい。
♦︎
1枚目はそこで終わっていた。亜沙美は悲しいような、続きを早く知りたいような、不思議な気分だった。その気持ちは真っ白な服の上についたシミのようにどんどん心に広がっていく。母ではない誰かを好きな父がいるなんて。
手紙は全部で4枚あった。亜沙美はそのまま手紙をめくり2枚目に目を落とした。
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