プロローグ

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 私たちの部屋は襖続きで、開けようと思えば簡単に開けることができた。けれど境界線の向こう側にはテレビ台や棚やホームセンターで買ったカーテン付のハンガーラックが並んでいて、間違って開けようものなら、それこそ配線や埃や、丸まった紙や衣類が飛び出てくる。それに釘を刺されてもいた。――ぜったいここ開けんなよ。開けたらブッコロスからな。  お兄ちゃんは「ブッコロス」の発音に角を持たせた。三才差の威力に屈し、当時の私はお兄ちゃんの支配下に甘んじていた。  お兄ちゃんの部屋には毎日のように、お兄ちゃんと似たり寄ったりの奇抜な髪型をした友達がやってきた。途中から混ざる人たちもいて、そういう人たちは鍵の掛かっていない玄関ドアから勝手に入ってくる。お兄ちゃんたちの会話に「おじゃまします」「いらっしゃい」は存在しなかった。言ってはいけないルールでもあるのかと疑ったほどだ。
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