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後ろの客の手には、飲み物だけでアイスクリームはなかった。
俺が困っているのを見かね、口を出したのだろう。
会釈し、コンビニの外へ出る。
「仁礼木先輩。待ってください」
後ろに並んでいた客が、俺を追いかけ呼び止めた。
俺が足を止めたのは、それが志茉の友人だったからだ。
葉山恵衣という名前で、志茉に負けず劣らず、気が強かった。
「先輩。さっきの話、聞きましたよね?」
「聞いた」
「あたしは仁礼木先輩が志茉のことを大事にしてるの知ってます。志茉に似た女性とばかり付き合ってたことも」
「おい! 大きい声で言うなよ!」
さすが、志茉の親友――否定しなかった俺に、葉山は冷ややかな視線を向けた。
「うわ、やっぱり……」
「絶対、志茉には言うなよ?」
「なに突然、小学生みたいになってるんですか。さっきまで、黒いオーラを出してたくせに」
「……いいだろ。長年、幼馴染としてしか、俺を見てなかったんだぞ。お前に俺の気持ちがわかるか!」
「嫉妬丸出し、大人げない牽制と独占。その辛い歴史を高校一年の頃から、生暖かい目で見守ってきました」
気づかないのは、志茉だけだ。
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