15 幼馴染 ※要人視点

4/11
前へ
/211ページ
次へ
 後ろの客の手には、飲み物だけでアイスクリームはなかった。  俺が困っているのを見かね、口を出したのだろう。  会釈し、コンビニの外へ出る。 「仁礼木先輩。待ってください」  後ろに並んでいた客が、俺を追いかけ呼び止めた。  俺が足を止めたのは、それが志茉の友人だったからだ。  葉山(はやま)恵衣(めい)という名前で、志茉に負けず劣らず、気が強かった。 「先輩。さっきの話、聞きましたよね?」 「聞いた」 「あたしは仁礼木先輩が志茉のことを大事にしてるの知ってます。志茉に似た女性とばかり付き合ってたことも」 「おい! 大きい声で言うなよ!」  さすが、志茉の親友――否定しなかった俺に、葉山は冷ややかな視線を向けた。 「うわ、やっぱり……」 「絶対、志茉には言うなよ?」 「なに突然、小学生みたいになってるんですか。さっきまで、黒いオーラを出してたくせに」 「……いいだろ。長年、幼馴染としてしか、俺を見てなかったんだぞ。お前に俺の気持ちがわかるか!」 「嫉妬丸出し、大人げない牽制と独占。その辛い歴史を高校一年の頃から、生暖かい目で見守ってきました」  気づかないのは、志茉だけだ。
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6973人が本棚に入れています
本棚に追加