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近すぎるせいだと思い、距離を置いてみたり、ちょっと会わずにいたり……我ながら涙ぐましい努力をしてきた。
ずっと志茉にとって、俺は隣の幼馴染のままだった。
けど、今は違う――
「でも、よくない噂が流れていて、黙っていられなくなったんです。仁礼木先輩は、本気の本気で、志茉を大事にしてくれますか?」
「耳にした噂が、よくない噂だと思うんなら、答えはもう出てるだろ」
面白半分で噂を流している人間と、悪意を持って噂を語る人間。そのどちらとも葉山は違っていた。
心配している葉山は、間違いなく志茉の親友だ。
深々と葉山は頭を下げる。
「すみません。くだらないこと聞いちゃって。これ以上、志茉を傷つけないでくださいね」
「ああ……」
一瞬だけ、後ろめたさを感じた。
この後ろめたさの正体がなんなのか、俺にはわかっていた。
葉山が去り、俺は志茉が待つアパートを目指す。
俺のポケットには、志茉の両親がくれた合鍵が、いつも入っている。
これは、俺のお守りで、いつでも入れるよう志茉の両親は、俺に鍵を渡してくれたのだ。
俺が辛い時や苦しい時、仁礼木から逃げられるようにと。
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