15 幼馴染 ※要人視点

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 ――仁礼木の家は、家族であり家族じゃない。  母は愛人を作り、兄はほとんど家に戻らず、父は仕事だけ。  集まるのは、仁礼木の家でイベントがある時のみで、中身のない形だけの家族だった。   仁礼木の家の前を通り過ぎ、アパートの門をくぐる。  門をくぐった庭の片隅に、志茉がいた。  小さな畑は雑草ばかり伸びてしまい、なにも植えられていない。  倉地のおじさんたちは、この小さな畑から採れた野菜を使って、よく料理をしていたのを思い出す。 「志茉」 「あ……、要人。おかえりなさい」  やっと笑うようになった志茉。  それなのに、俺に向けた微笑みは作り笑いだった。 「なにかあったか?」 「ううん。なにも……」  元気がないといいより、どこかよそよそしい。  コンビニの袋から、アイスクリームを出して志茉に渡す。  アイスクリームについた袋の水滴が、乾いた砂の上に落ちる。  その水滴を追って、うつむいた志茉が、突然、意を決したように顔を上げた。 「あっ、あのね、要人。そろそろ、お隣に戻った方がいいと思うの」 「志茉を一人にできない」
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