2 社長就任初日

3/6
前へ
/211ページ
次へ
 仕事をサボり、自分だけ新社長を見物するのは、後ろめたいらしく、私まで巻き込もうとする。 「ノリが悪いわねぇ。他の課の子たちは、見に行ってるわよ」  なぜか、すでに反感を買ってしまったようで、不機嫌な顔をされた。  要人(かなめ)によって、私の平穏な日々と、将来設計が台無しである。 「私は気にしないから、新社長を見に行ってきたら?」 「そう? じゃあ、行ってくるわ」  私が上司に告げ口しないとわかったからか、ふくれっ面から一転、大喜びで経理課から出ていった。  なにが悲しくて、ほとんど毎日現れる幼馴染の顔をわざわざ見に行って、『わぁ! かっこいい! なんて素敵な新社長!』という茶番劇を披露しなくてはならないのか。  間違いなく、要人に馬鹿にされるだろう。  それに、今頃、大勢の人に囲まれて、近寄れないはず。  昔から、要人はいるだけで、華やかで人の目を惹きつけ、周囲に人を集めるタイプだった。  要人と比べたら、私なんて平々凡々な一般人。  わかってることなのに、なぜか、ため息が出てしまった。 「倉地、どうした。疲れているのか?」
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6938人が本棚に入れています
本棚に追加