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俺の腕に触れた志茉は、今度は俺が仁礼木を追い詰めると思っている。
――それは正しい。この日を待っていたのだから。
「わかった。なんとかする」
志茉の涙をぬぐい、押さえつけていた体を解放する。
「な、なんとかするって、なにをするつもり!?」
「志茉から、俺にキスしてくれたら。教えてやるよ」
「やるわけないでしょ!」
顔を赤くして怒る志茉は、あの頃と違う。
それが嬉しくて、俺は笑った。
スマホを取り出し、連絡するのは俺の能力を買い、一気に昇進させた宮ノ入社長の秘書、八木沢常務。
「要人、どうするの?」
「昔とは違う」
「違うのはわかるわ。でも、誓約書があるのよ?」
「あるな。だから、こちらも正攻法で行く」
宮ノ入グループなくらいの大企業なら、仁礼木の弁護士に勝てる弁護士をいくらでも用意できる。
「仁礼木と争うの? そんなことしたら、要人は仁礼木の家と縁を切ることになるわ」
どこまでも優しい志茉は、仁礼木家のことを考えているようだった。
だが――
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