6981人が本棚に入れています
本棚に追加
とうとう私は、要人に誓約書の存在を打ち明けてしまった。
莫大なお金を請求されたらどうしようとか、訴えられたら怖いと思ったけど、要人は、自分の家である仁礼木相手に戦おうとしている。
そんな要人を見て、私が思うのは、おばさんより要人のことだ。
「要人はいったい、なにをするつもりなの……?」
正直言って、昨日の夜はあまり眠れなかった。
要人になにか考えがあるのか、今日は朝から宮ノ入の本社へ行き、不在だ。
「今日は朝から、要人さんがいないせいか、受付前を通る役員たちの笑顔が眩しかったわ」
「恵衣。要人を鬼か悪魔みたいに言わないで」
昼食も終わり、化粧室でメイクを直しながら、恵衣はそんなことを言った。
恵衣は新しいマスカラを買ったのか、明るいブラウン系のマスカラに変わっていた。
「なに言ってるの。要人さんが優しいのは、志茉と一緒にいる時だけよ」
「そんなに要人はひどいの!?」
「かなりのやり手っていうのもあるけど、ライバル会社を平気で罠にはめるし、嫌がらせをした相手は気がついたら、会社からいなくなってるし」
「なにそれ、ホラー?」
最初のコメントを投稿しよう!