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営業部から新たな伝票を持って現れたのは、営業一課のエースの湯瀬さんだった。
私より二個上で、爽やかな部類の営業メンバーを引き連れて、やってきたけれど、全員面白くない顔をしている。
「いえ。ちょっと……。湯瀬さんたちこそ、空気が重いですね。なにかありました?」
「イケメン社長とやらが、就任したおかげで、陰が薄くなって退屈なんだよ」
「ああ……なるほど……」
いつもはモテモテで、ちやほやされている営業部メンバーはイケメン揃い。
今日ほど、女子社員に冷たくされたことはないと思う。
「社長が挨拶に回ってるけど、倉地はイケメン社長を見に行かなくていいのか?」
「忙しいので……。それより、出し忘れた領収書はありませんよね?」
「倉地さんはマイペースだな」
「さすが、経理課のエース」
そう言いながら、接待で使ったタクシーの領収書を私に手渡す。
エースなんかじゃないですよと、言おうとした瞬間、経理課の中がざわついた。
「仁礼木社長よ!」
「社長が経理課に来られたの!?」
経理課長は仕事の手を止め、椅子が倒れるくらいの勢いで、立ち上がった。
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