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要人が入ってくると、なごやかだった空気は一変し、ピリピリした空気が流れた。
――睨んでる。
私が男子社員とおしゃべりし、仕事をサボっていると思ったらしく、威圧感のある態度と鋭い目で、こちらを見ていた。
もちろん、要人の顔は笑顔である。
笑顔なのに、威圧感を感じているのは、私だけでないらしい。
私のそばにいる営業部の男子社員たちは、要人の魔王的なオーラに圧倒され、固まっていた。
「社長。日本人離れしてるよな……」
「端正な顔ってああいう顔を言うのかも」
要人のおばあちゃんはドイツ人で、外国人の血が混じっている。
それで、髪の色は茶色く、瞳も近くで見ると目の奥が青い。
美しいのは認める。
でも、あの威圧感は不要だと思う。
「えーと、領収書は処理しておきますね」
とりあえず、この場を解散し、何事もなかったように仕事をすることに決めた。
もちろん、要人に対しては、社長と社員の一線をバッチリ守って、会釈しておく。
それのなにが気に入らなかったのか、要人がつかつかと大股で、こちらに近寄ってきた。
「ちょっ……ちょっと!」
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