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新社長の噂話は、経理課にもなぜか届き、お昼前には、要人が仁礼木総合病院の次男であることが知れ渡り、彼女はいるのか、婚約者は誰なのかと、探りを入れる女子社員が増えた。
探偵並みの鋭さを持つ、経理部の大先輩たちは宮ノ入グループの知り合いの社員にまで、聞き込みをする始末。
今日の沖重グループの生産性の悪さは、新社長として、要人は反省するべきだと思う。
「私の存在は空気……。そう……空気になるのよ!」
昼休憩のランチタイムには、社食で友人と食べるのが、私の楽しみ。
昨日の残り物を詰めた手作り弁当を手に、社食へ向かう。
「志茉、こっち! 早くっ!」
「恵衣? どうして、そんな必死になってるの?」
社食の窓際を陣取り、すでに食べる準備万端の様子で、椅子に座って私を待っていたのは、高校からの友人である葉山恵衣。
一番いい窓際の席を陣取り、早く来いと手招きしていた。
「遅いっ! なにしてたのよ」
「仕事以外にないでしょ。恵衣が言いたいことは、想像つくわよ」
恵衣は受付で働いている。
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