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――両親はとても明るくて、仲が良かった。
『志茉は要人君が好きだなぁ』
『やきもち?』
『うん。でも、要人君しかいないよ、志茉には』
『要人君にもね』
夢の中だったか、それは過去の記憶なのか、わからないくらいぼんやりしたもの。
でも両親は私を見て、笑って言ったのだ。
『志茉。幸せになって――』
そこで、目が覚めた。
ふとした時に思い出す記憶や夢を見た後、いつも泣いてしまう。
でも、今日は違う。
穏やかな顔で眠る要人の姿が目に入り、微笑んだ。
「おはよう、要人」
疲れているのか、要人は起きる様子がない。
昨晩の疲れだろうけど、すでに時計はお昼近く。
要人はぼうっとした顔で、私を見る。
「あー……朝か」
「昼よ。一度、起きたでしょ?」
「ああ、志茉を連れて風呂に入って……ぶっ!」
「それは言わなくていいのよ、言わなくて」
大きな枕を手に取り、枕で要人の顔を埋め、黙らせた。
本当に疲れているのか、要人が動かなくて、気になって枕をどかす。
「要人? どうしたの?」
「……いや、幸せだなと思ってた」
少しだけ顔を上げた要人の顔は、赤くなって見えた。
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