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商才がある血筋なのか、今の今まで、親族以外が子会社の社長になることはなく、経営も順調。
その権力とコネクションは経済界にとどまらず、政治にも関わっているという噂だ。
つまり、首領!
「恐れ多いどころか、恐怖よ……」
まさか、失礼を働いたら、命を狙われるなんてことは――高いビルを眺めて、ぶるっと震えた。
ありえそうだ。
「そんな緊張しなくてもいいと思うぞ」
「平凡なOL、木造アパートで穏やかに暮らしていた私に、そういう気休めはやめてくれる?」
「むしろ、話がわかる人間の部類だ」
「要人と同類なら、話がわかるかどうかはアヤシイところよ」
話し合いで解決なんていう平和的思考を持たないくせに、なにが話がわかるだ。
まったく説得力がなかった。
最上階の社長室があるフロアから見えたビル群は、白く見え、そのビルの高さが普通の会社ではないレベルのものだとわかる。
こんなビルの持ち主に会うかと思うと、緊張して、口から心臓が飛び出しそうだった。
「失礼します」
心なしか、要人の声もいつもより低く、表情も引き締まっていて、雰囲気が違う。
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