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要人が小声で、『秘書課だろ』と言ってきたけど、笑顔で無視をしておいた。
「扇田の件では、少々迷惑をかけてしまったな。申し訳なく思っている」
頬がひくっとひきつった。
会長じゃなかったら、少々じゃないですよと言いたかった。
愛弓さんは強烈だったし、私は経理課にいられなくなり、秘書課へ。
そして、アパートは炎上……散々だ。
「それで、宮ノ入会長。ご満足いただけましたか?」
要人は口の端をあげ、悪い笑みを浮かべた。
「もちろん。見込んだだけのことはある」
「会長も相当人が悪い。俺が本気で扇田工業を潰すように、わざわざ仁礼木に連絡して、扇田の娘を俺の婚約者になるよう仕向けましたからね」
「そうだ。あの女は便利だっただろう?」
「そうですね。扱いやすかった。こちらの思い通りに動いてくれましたよ」
つまり、要人が愛弓さんと婚約解消するには、愛弓さんが扇田工業の社長令嬢でなくなる必要がある。
わざと、仁礼木家を通して、お見合いを申し込み、要人の逃げ場を奪い、本気を引き出したということらしい。
「帳簿を手に入れるのは苦労しましたが、まあ、自分は食事をしていただけなので」
「わしのボディガードである朝比が、うまくやってくれたようだな」
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