3 友人の忠告

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「…ねえ、志茉。あたし、今、あの笑顔を見て思ったんだけど」 「うん?」 「あんた、要人さんを逃したら、絶対に一生独身よ?」 「そうかもね。それでもいいわ」  すでに私は就職から退職までの人生設計を描き、心穏やかに暮らすため、田舎への移住計画と貯蓄を始めている。  「よくなーい! 結婚したいと思った時に、要人さんレベルの男が、すぐその辺に転がってないんだから。なんなら、一緒に飲み会へ行く? 行けば、現実がわかるの?」  ずいっと顔を近づかせ、凄まじい圧をかけてくる。 「ちょ、ちょっと。恵衣!」 「そうだ。飲み会に行こ。今日、ちょうど受付の子たちと営業の湯瀬(ゆぜ)さんのグループで、飲みに行くのよ」 「でも、今日は大事な予定が……」 「なにその態度! 湯瀬さんグループから飲み会に誘われて、断る女子社員は、社内に誰もいないわよ」 「だって、今日はスーパーの卵が安い日で……」  キッと恵衣は、目を吊り上げて私を睨む。 「スーパーの卵じゃ恋の卵は育たないのよ! その若さで独身主義? ダメダメ! もっと人生楽しまなきゃ」  なにを得ようが、楽しもうが、最後には全て失うのに――両親を亡くした時の耐え難い悲しみを思い出し、目を伏せた。  その人が私の中で、大切な存在になればなるほど、一緒にいるのが怖い。  口に出せない言葉を胸の奥にしまい、散っていく桜の花を眺めていた。  悲しみに年齢なんて関係ない。  私は時が過ぎていくのを待つだけの身だった。
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