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「おい、志茉。会社で話しかけるなって、なんでだよ?」
「目立ちたくないの!」
「せっかく同じ会社で働けるのに?」
「会社で話しかけたら絶交ね。あと、アパートの部屋に、いきなり入ってこないで。一応、年頃の男女だから」
要人はムッとしたけど、私はここで甘い顔をするつもりはない。
「厳しいな」
「厳しくない。確か、私が十歳の頃だったわね。たまたま学校の行事で、要人と手を繋いだだけで、私は上のお姉さんたちから、ブスだのブサイクだの、散々言われたのを忘れてないわよっ!」
世の中の厳しさを知らないピュアな頃の私。
女子たちの冷たい視線に、なにが起きたか、さっぱりわからなかった。
それで、要人が普通より上のイケメンで、スポーツだって勉強だって人並み以上のモテモテ男子だって、身を持って知ったのだ。
「手を繋いだのが原因じゃないぞ。志茉のことが、好きなのか聞かれたから、昔から好きだって答えたからだ!」
ぽとっ……と、白いご飯が、あと一口というところで茶碗に落ちる。
なにをドヤ顔で言ってくれるのだろうか。
しかも、憎たらしいことに、清々しい顔をしている。
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