1 幼馴染は社長

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 立ち上がり、小さな台所の食器棚から、要人が使う専用の茶碗と箸を取り出した。  結局、今日も追い帰せず、夕飯を用意してしまう。  招き猫の貯金箱に、五百円玉を入れた音が響いた。  夕飯一回に付き五百円。  要人はもっと払うと言ったけど、それは断った。  私が作るものは、質素なものばかりで、明日のお弁当のおかずにもできるようなものが多い。  牛肉とゴボウを甘辛く炒めたものと味噌汁、ご飯とほうれん草のお浸し、玉子焼きを並べる。 「志茉。俺の分の夕食、作ってあっただろ」 「ないです」 「いや、あったね。一人分でこの量はおかしい」  大盛のご飯に、多めのおかずは見るからに多かった。  それでも、私は意地でも認めない。 「要人が来なかったら、お弁当にするつもりだったのよ」 「ほらな。志茉は俺が来るかもって期待してた」 「誰が期待してたよっ! 私をイラつかせるのだけは、社長どころか会長級ね!」 「それはどうも」  温めた味噌汁を私から、受け取り、要人は勝ち誇った顔で笑った。 「志茉の卵焼き、好きなんだよな。甘くて、どっしりしてて、食べごたえがある」 「そ、そう……」
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